~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
「王者(あなた)に飽きさせはいたしませんよ」
マグヌムはにたあっと耳まで口を裂いて笑った。
クリスチーネが口をイーっとするが、王子に押さえつけられてしまった。
マグヌムは身を引きずるようにして、燭台を掲げて先に立つ。
「あきらめません。ボクは決して。マグヌム殿、あなたをあきらめないから」
アレキサンドラの瞳が薄茶の輝きを放ち始める。
「私だとて同じだ」
王子の爪は異様にがっしりと伸びてきている。
オオカミ男に変化し始めている。ゆっくりと。
ここでは時間の感覚が現世よりも遅めのようだ。だが、時間がないのは同じだ。
「王子」