~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
アレキサンドラの懸念するような声音に、ようやく薄暗さに慣れてきた目が、己の変化をはっきりと目撃する。
「親友よ、これから試練が待っている。ついて来てくれるな」
彼女ははっきりと答えた。
「お心のままに」
王子は自らのおぞましい姿に嫌悪を抱いた。
「怯えないで、王子」
アレキサンドラが後ろから抱きしめた。しかし、常と違って剛毛の感触に驚き、手を引っ込めそうになった。
「マグヌムだとて、苦しんだはず。我々が負けていられますか」
王子は背中のぬくもりを感じて、切なげに目をつぶった。