ヒミツの生活
あたしはお母さんとの電話を終えて、大悟に話し掛けた。
「大悟は、親に言わなくていいの?」
「俺、両親居ないんだ。」
え…
「咲和と同じ。両親に捨てられたんだ。」
「ご、ごめっ…」
悲しすぎて言葉が出なかった。
そして自然と涙が出た。
「俺は物心ついた時には、もう施設に居た。両親の顔なんて覚えてるわけもなかった。」
大悟は咲和を指であやしながら言った。
悲しそうな目をしている。
「だから咲和が自分と重なるんだ。」
咲和はキャッキャッと言いながら、大悟の指と遊んでいる。
「俺は、運動会とか授業参観が嫌だった。嫌で嫌で仕方なかった。そんな思いを咲和にはさせたくない。」
その時の大悟の目は少し潤んでいた。