ブリーフ エタニティ
そして今日がその日なのだが…
約束の時間30分前にもかかわらず、集合場所であるバーのドアを開いていた。
3月最終週の金曜日。
外の空気で冷え切った私の体だったが、最後に来た時と全く変わらない店の様子を見たら一気に温かいものがこみ上げてくるのを感じた。
「いらっしゃいませ。あれ…久しぶり」
マスターが一瞬驚いた後にすぐ優しく微笑みかけてくれた。
以前のイメージよりだいぶ落ち着いたなぁ…当たり前か。最後に来たのは彼と別れた1年半前なんだから。
「別れ話をしたのを最後に全然来れてなくてすみませんでした。
そしてあの時ぶりに今から彼に会うんですけど、修羅場にはならないと思うので気にしないでくださいね」
「ちょっと色々と詳しく話を聞きたいところなんだけど…とりあえず飲み物は?」
このお店はオリジナルのカクテルが有名だ。
当時よく飲んでいたあのカクテルの名前、なんて言ったっけ…
「いつものにしますか?」
そんなことが顔に出てたのだろうか。
マスターがニヤッと笑いながら提案してきた。
「あ、はい…なんて名前でしたっけ。あのカクテル」
「brief eternity」
つかの間の永遠…その響きが懐かしすぎて涙が出そうになった。
「そう、それ!久しぶりにお願いします」
悟られないように明るく取り繕う。