ブリーフ エタニティ
「でも軽率じゃないのはわかったよ。
あのバーのマスターから小出しにされる恵司の話を聞いていっぱい笑わせてもらった」

「え?!何きいたの?」

急に慌て出す彼が面白かった。

「別れてからもあのお店に通ってたこととか。別れた当初からより戻したいって酔っぱらうと嘆いてたこととか、あとは…」

「あーもういいから!」

彼が私の話を止めるように顔を少し赤くしながら手を振った。
そして熱を覚ますように勢いよくビールを飲んで一息ついた後、口を開いた。

「あのマスターの前ではかっこ悪いとこしか見せてなかったからな〜。
別れた後一人で飲みに行った時は、若菜と顔合わせないか不安半分期待半分だったんだけど、別れ話の場所に使ったことを謝らなきゃなと思って。
そしたらあの人聞き上手だからさ、気づいたら未練がましいことばっかり話してて。
すぐに彼女がほしいとも思わなかったから、なんとなく寂しくなって飲みたくなった時にあのお店に通うようになったんだよね」

「なるほどね。私の分も謝りに行ってくれてありがとう。
最近は恵司の代わりに私が同じように使わせてもらってるよ。そしてマスターが聞き上手なのはよくわかる」

「でしょ!行動起こさないの?って何度も言われてたんだけど、自分が別れた当初と何か変われた気がしなかったし半ば諦め気味だったんだけど…急な転勤が決まったことを伝えたら今がその時じゃない?って背中押してもらったんだよね」

なるほど、全てあのマスターのおかげというわけか。

「帰国したらお土産持って改めてお礼しに行かなきゃだ」

「俺の分も伝えといて」

「もちろん」

テンポのいい会話が心地いい。

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