ブリーフ エタニティ
話がひと段落したところで、前から疑問に思ってたことを投げかけた。
「お店には行ってたのに、サークル関連の飲み会とか同窓会とか全く来なかったよね。
ほっとする反面ちょっと寂しかったんだけど」
「あーそれね。若菜の顔は見たかったけど、話の流れで新しい彼氏の話題とか出されたときには絶対変な酔い方するなと思ったから避けてた」
真顔でそんなことを言う彼を見て思わず吹き出してしまった。
「笑うとこじゃないんですけど」
「ごめんごめん。けど彼氏とかできなかったし。
私は顔も見たくないのかと思って悲しかったんですけど」
その言葉を聞いて彼が気まずさ半分嬉しさ半分のような笑いを浮かべた。
「そうだねー。だいぶ女々しかったね。冷静になれば会いたい気持ちの方が大きかったのに。
俺が会わない間、若菜にいい人がいるのか気になってたんだけど、もう過去とか俺が知らない間のこととかどうでもいいから、今の自分のこと見て欲しいなって思ってる」
真面目なことをまっすぐ見つめて言われたら、私も恵司が別れてからどんな生活を送っていたのかなんてどうでもよくなってしまった。
「そうだね。よく知ってる間柄だけど、新鮮な気持ちで付き合えたら一番いいよね。昔と比べるとか、これが私らしいとか、決めつけちゃうのはちょっと違う気がする。
私も多少は成長したと思うし、改めて今の私と向き合ってもらえたら嬉しいな」
びっくりするほど真っ直ぐな言葉が出てきたものだ。
昔の自分とは違って、恵司と一緒にいると安心して思ったことを伝えられるのが嬉しかった。
「若菜、めちゃくちゃ大人になったね。
昔は顔には出るけど言葉にはしない人だったのに」
「昔の私と比べないでよ」
「掘り返すつもりで言うわけじゃないから目をつぶってほしいけど、昔のツンツンした若菜も好きだけど今のちょっと大人になった素直な若菜もっと好きだな」
ただでさえ人の心に入るのがうまいと思ってたけど、心を開いた人に対してはより一層馬鹿みたいに正直になる、この人のこう言うところが私も好きだなと改めて感じた。
「嬉しさをうまく言葉で表せないから抱きついてもいい?」
「変わらず不器用なところも可愛い」
彼が恥ずかしそうに笑いを噛み殺したと思ったら、手を引かれて腕の中に導かれていた。
やっぱりこの体温と彼の匂いが落ち着く。