happiness

少年は、思い出させる。


 雪が降っている。
 しかし、ぱらぱらとした雪が降っていた昨日とは違い、
大粒の雪がこんこんと降っているが、傘を差したりすることなく、
莢は大好きな場所へと足を運ぶ。

 辿り着いたそこには、昨日と、その前と同じく彼が座っていた。

 「今日も、雪だね」
 
 莢が来たことを足音や気配で感じとったのであろうか。純は莢のほうを見ず、天を見あげ、そう言った。
 莢は何も言わないで、空を見上げている彼を見つめる。

 「……じゃあ、行こっか」

 立ち上がり、莢のほうを見て微笑む。
 その表情がとても切ないものだったから、これから行くところが、あまり楽しくないところなのだと予想させる。
 そこで、ふと莢は思う。
 
 純が、幸せそうに微笑んだこと、あったかな。


 
< 14 / 44 >

この作品をシェア

pagetop