happiness
純は莢の手を取り、歩き出す。どこをどう歩いているのか、莢にはわからなかった。地に足がついていないような気がする。
「莢、着いたよ」
そう言われ、立ち止まり莢はうつむいていた顔をあげ、その場所を見る。
「病院……?」
眼前に広がるのは、大きな7階建てくらいの白い建物で、大学病院と壁に書かれている。
「そう。ここに、君はいるんだ」
「私……? 私は、ここにいるじゃない」
「……違う言い方をするよ。君の身体はこの病院の病室に、眠っているんだ」
その言葉に莢は驚愕する。
意味がわからない。
いや、寒い冷たいの感覚がなかった。だから、意味はわかっている。けれど、それを理解したくないという気持ちが理解を妨げる。