happiness


  どうして君は泣いているの?



 莢は答えない。次々と涙が頬をつたって落ちてくる。



  君の願いは何なの?



「叶えられない願いなんて……っ」



  今日は願いが叶う日なんでしょ? 大丈夫、僕が叶えてあげる。だから泣かないで。



「もう…もう……わたしはっ…」


 そう言って、毛布ごしに膝の上にいた僕を降ろす。そして、近くに設置してある棚の引き出しから、果物の皮を剥く為に用意されていた小さな刃物を取り出す。



  何してるの? それは痛いことでしょ?
  僕は知っているよ。痛いことを何でするの?



 どうか僕の声が届いて、と強く思いながら、叫ぶ僕。しかし、その声が莢に届くことなどない。僕の思いも虚しく、眼前に、赤い花が咲いた。



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