happiness
「私……あなたの願い事を聞いてなかったね……」

 やっと聞き取れるかのような莢の声。そして荒い息づかいだけが室内の主役となっていった。顔色が悪くなっていく。お医者さんを呼ばなくちゃ……。

「願い事は何?」

 微かになっていく息づかいの中で莢は僕に尋ねた。
 

 
  それどころじゃないよ…っ。



 しかし僕は、何をしてもお医者さんは呼べない。
 だから、僕は莢と会話をすることを選んだ。



  願い事? 僕の?



「あなたの、たったひとつだけの願い事」





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