happiness

 純はコートのポケットから、何かを取り出す。そして、素早く私の手に握らせる。そしてそのまま両手で私の手を包み込む。

「この三日間は、きみの願い事を叶えられるように、サンタさんが僕にくれた期間なんだ。生きられるのに、生きることをやめてしまったきみが、事実を知って、そのまま永遠の眠りにつく道と、もう一度生きる道の、どちらかの道を選択する三日間」

 そう言い、にこっと微笑う。

「ごめん、僕には、そのどちらかを叶えることしかできない」


 あの表情だ。
 寂しそうな、切ないような、そんな感情がこもった笑顔。


「時間だ。行かなくちゃ」

 その顔は、透き通っていた。
 慌てて自分の手に重ねられている純の両の手を見る。見間違いではない。薄く、透けている。
 そう、それはまるで雪が地面に舞い降りた時、すうっと溶けていく様のよう。



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