~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>
「あれは罠です、王子」
「わかって、いる」
「霧の中から、だれかが……」
真っ白なドレスを着た背の高い女性が何かを差し出している。
「あなたの唄を聞かせて……愛しい人」
それは黄金のライラだった。音がする。
「おまえはだれだ」
「おまえではないわ、わたくしはあなたの守りびと。ずっとあなたの歌声を聞いていた……さあ、唄っておくれ」
その顔は悲しげで、涙にくもって瞳の色が見えない。