~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>
その目には涙があった。
「ボクだって、わたくしだって、叶わない愛を知っている」
「なによ、その涙、わかったような口、きくんじゃないわよ!」
「いいえ、わかるの。だから、その涙が本物だって事も」
「くくくっ、あーははは! 私は水妖よ。男をたぶらかすためなら、そら涙くらい流すわよ」
『がんばったんだな。人魚が二足歩行するなんて、大変だったろう?』
クリスチーネがその涙をなめて「磯の味」と一言。
女性ははっとして、真っ赤に染まった真っ白のドレスを隠そうとしたが、叶わなかった。
「君のことは知っていたよ。たまに噴水の陰で泣いてたろう?」