~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>
花園で美女を抱くよろこびに、歓喜の叫びを挙げる。彼は美女の肢体を天にでも掲げ挙げるかのように持ち上げた。
「逃げるな! 私を助けるんだ。はやく、し、ろ」
雄牛は変だな、というように腕の中の美女を見た。プラチナブロンドの超絶美形である。
ただし、王子は男だ。
『あー、王子ったら、自分でまやかし破っちゃったよ。しっかたねーなー。もう少しだったのに』
「王子は言ってる。はやく逃げろって。自分をおいて逃げろって」
『これだからしょーがねーなー。でも嫌いじゃねーさ。それでこそ御主様、だもんな!』
アレキサンドラの目尻に涙が滴った。クリスチーネはチュッと吸い、
『悲しい涙はしょっぱいな』
と、言った。