~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>
両腕を弛緩させ、剣を取り落とす。静かな涙がこめかみからあごを伝う。修羅地獄の中で、彼女の姿だけが浮いていた。
「死んだ方がましだ。ならばとるべき道はただ一つ!」
決意の目で彼女は長剣を握った。
だれが持ち出したのか、剣身の細い、突き業に特化したフルーレだった。軽量で、これならばひと突きで……
「やれる!」
彼女の剣先は王子の胸に。
「あなたを殺して、ボクは死なない! あなたを殺した罪に苦しみながら生きてやる!」
だが、ちょっとの差で剣先はずれた。
というよりも、雄牛が王子を頭上から放り投げたのである。
化け物は片目をフルーレに突かれ、逆上したが結局「オーオー」と言いながら悲しげに去っていった。