~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>

 王子は助かった。アレキサンドラはもう、泣かなかった。

 彼女の瞳は金色に輝き、リリアの封印が解けかけているように見受けられた。


『あんた、情の強いひとだね。王子を殺す、なんてさ。普通考えても実行まではしないと思うよ、うん』


「ここは地獄だ。やるべきことをやるだけだ」


 王子は彼女を見なかった。

 軽口を叩く気力もない。地に膝をついて、繰り返していた。


「助けろと言ったのに! なぜ逃げなかった。こんな情けない男と知って! 足手まといと知って!」


「こざかしい、というのですよあなたのしたことは。お助けいたしましたよ。お言葉通り」


 どうやら、王子は彼女に見限られようとわざと心とは逆のことを言っていたらしい。

 しかし、彼女には通じなかった。むしろ王子の言葉は彼女を傷つけた。
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