~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>


 いわく。

 禍(か)蛇(だ)の剣で竜を麻痺させ、蕩蛇(とうだ)の剣で首を落とす。

 どちらも竜殺しに特化した、振るう者に合うように刀身を変化させる不思議な剣だった。


「私たちはもう、おまえ達妖刀の力を借りない。あの後悔を。あの痛みを、二度とだれにも味合わせない」


 王子が言うと、主はがらがらと割れ鐘のように笑った。


「なにがおかしい」


『禍(か)蛇(だ)の剣は男が振るい、蕩蛇(とうだ)の剣は女が用いる、毒に浸して我が呪いの力で魔力を与えた。さて、今度はだれに使わせようか』


『ようはだれでも善いのだ。おまえ達のように苦しむカオ……違うな。苦悶に。呪いに。怨嗟に、踊り出す滑稽を観たいのだ』


 地獄の主が、シャーッ、と蛇が威嚇するかのような音を立て、笑った。

 アレキサンドラ達は顔を見合わせた。
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