~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>
男は王子とアレキサンドラにひそひそとわけを聞き、
「ええっ、クリスチーネ様が地獄の底へ? 供は? 二人? え? ただの知り合いー?」
なな、なぜ一(ひと)処(ところ)にいて迎えを待っていて下さらなかったのだ!
ああ! なんと言うことだ。……天主の機嫌ばかりを気にかけているのかと思えば、こんなことも言うのだ。
『平気だぞ。ここにいる二人は二つも地獄を経てきた。ぴんぴんしてるだろうが』
そんなことを言ってはいるが、それでも地獄は地獄だ。苦しみの渦中へ飛び込むのだ。
人間のもつどんな覚悟なども、役には立たない。
『こいつが地獄に耐えてこられるか、改心してもどってこられるか、ちゃあんと見てやんだからな』
クリスチーネはツン、として構えた。