Little Princess
1*chance
『大好きだったよ。』
その言葉が現在進行形から過去形になってることに、君は気づいただろうか。
胸いっぱいに香る彼の柑橘類の香水が、私のワイシャツに染み付いてしまうぐらい、私は彼の細い腰に腕を巻きつけた。
「…俺も。
美奈のこと大好き。」
別れ際の定番になっていた愛の告白も、今日で終わることになるなんて、彼は微塵も思っていないだろう。
きっと、この日々がずっと続いていくと、彼は思いこんでいるはずだ。
――私だって、そのつもりだった。