Little Princess
――それは、本当に突然のことだった。
「……美奈!?」
荒い、息づかい。
慌ただしく駆け寄ってくる音。
彼の声と、足音でさえ記憶していた私の耳は、一瞬で作動が停止した。
…忘れてた。
慎治が探しに来る前にここを出ようって決めていたのに。
シロツメグサの冠をつくるのに、熱中しすぎたんだ。
「…心配したじゃん。」
ぎゅっ、と慎治に力強く抱きしめられる。
全てが狂った私の計画は、見事に崩れおちて。
柑橘類の香水に包まれながら、私はその場に立ちつくしていた。