Little Princess
「…理由は、聞かないで。」
『えっ??』
「なんで家に帰らなかったのか、聞かないで…。」
絞り出すように、か弱い声で。
涙目になりながらも、俺の服の裾を引っ張りながら訴えてくる美奈。
その必死の訴えと美奈の震える肩で、俺は何も言えなくなってしまった。
…いや、正しくは。
“言えなくなった”のではなく、“聞かないほうがいい”、そう思ったんだ。
「…あ、そうだ!」
さっきの出来事がまるでなかったかのように、明るく無邪気な笑顔を見せる美奈。
彼女は一回座り込むと、芝生に置いてあった何かを持ち上げた。