Little Princess
「…慎治、美奈ちゃんはいないのよ。」
『えっ??』
「もう、とっくの昔からいないの。」
母さんが俺の両肩に手をおきながら、困ったように俺をたしなめる。
まだ放心状態で有りつつも、俺は冷静さを取り戻しながら、母さんの言葉の意味を考えていた。
――美奈は、いない…??
「…慎治は、まだ美奈ちゃんのことを忘れられないの??」
そう切なげに呟いた母さんの言葉の残像が、俺の頭のなかにグルグル回る。
思い出せそうで、思い出せない。
もう、すぐに出てきそうなのに。
…大事なことだけが、出てこないんだ。