Little Princess
彼、…慎治は、この空のように透明な人だった。
昔、慎治が消しゴムを忘れていて、困っていたことがある。
隣の席だった私は、消しゴムを貸してあげようと試みたが、素直に渡せなかったんだ。
だから、『金子さんが消しゴム貸してくれるって』と勝手に他人の名前を使った私。
――そんな私なのに。
慎治は、『美奈は優しいね。』と私の名前を呼んで、ニコリと微笑んでくれた。
その時、感じた。
きっと慎治は、私が照れ隠しに他人の名前を使ったことを、気づいていたんだろう。
そして、それをあえて言わないような慎治の純粋な優しさが、私は大好きだった。