勿忘草


「‐‐リカょ。‐カシ‐‐」




何を言っているかまでは分からないが、
微かに聞こえるのは女性の声。



その声に総護君はひどく驚いた顔をして、



一瞬私を見たかと思うと、すぐにどこかへ歩き出した。



私はそんな総護君の後ろ姿を見つめる。



「ー茉莉花。なん…~」




そして彼は歩きながら言った。




マリカ?




最初は様子が変だったからどうしたのかと思ったけれど、
どうやら知り合いらしい。




親しげにそう呼んでいた。



私はまた大水槽に目を戻す。















-チクリ



胸の奥に小さな痛みを感じる。






「…?」







水槽の水を見ても、



その中を優雅に泳ぐ魚達を見ても、



心は穏やかになれない。




むしろ私の心は、ざわざわと波をおこして落ち着かない。








どうしたんだろう




そう思うと何故か、胸の痛みがました気がした。





< 111 / 136 >

この作品をシェア

pagetop