勿忘草

さっきはあんなに綺麗に見えた水槽の青。



今は見ているだけで、何故か悲しくなった。




神秘的に水槽の青で照らされたこの空間も、


今となってはただの暗い部屋。




ズキズキと、胸の痛みは増してゆく。





  《茉莉花》



彼のそう呼ぶ声が、頭の中でこだまする。





何故か視界は真っ暗になってしまった。







イヤ…







イヤ…






キキタクナイ…




ヤメテ…









ウバワナイデ…








ヒトリニシナイデ…









オネガイ…






オイテイカナカイデ…
















真っ暗になってしまった視界の中、響くのは心臓の音と、
こだまする彼の声と、





誰かの声。





知らない感情と共に、私の中に流れ込んでくる。


真っ黒で、どろどろしたキモチ。





こんなの知らない。




こんなキモチ知らない。






こんなキモチ知りたくないー…。






「…-オン」






真っ暗の視界の中、声がする。





  「シオン」




「 !!」



ぽんと後ろから、いきなり肩を捕まれ、フッと現実に戻る。




「おい、大丈夫か?なんか顔色わりぃぞ」



真っ暗だった視界は元に戻り、目の前には心配げに眉をひそめる彼の姿。


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