勿忘草
「ちょっと待ってろ」
彼はそれだけ言って、急いでどこかに行ってしまった。
私は言われた通りそのまま座る。
そんなに急いでどこにいくんだろう?
やっぱり…
怒ってるのかな?
私はなんだかいたたまれない気持ちになり、思わず俯いた。
ジジジジッ
ミーンミンミン
「あひゃははは」
「わぁー」
遠くから子供はしゃぎ声と共に蝉の鳴き声が聴こえる。
額に浮かんだ汗を拭う。
私の気持ちとは裏腹に、じりじりと照り付ける太陽は、
パラソルのお陰で私には当たらないものの、
暑さが辺りに充満していた。
本能的に体に籠る熱を、溜め息で吐いて出そうとするが、
結局暑さから逃れる事は出来ない。
そして少し頭がクラクラしてきた頃。
ヒヤッ
「!!」
俯いていると、突然頬にひんやりと冷たい物を感じて、
驚き顔をあげる。
「大丈夫か?」
そう言って心配げに私を見つめる彼の手には、冷たいカンジュース。
「これで冷やしてろ」
そう言って彼は私にそれを差し出す。
私は状況をうまく理解できなくも、それを受け取った。
そして彼はまじまじと私の顔を見る。
真面目な顔で見つめられ、私は思わず身体を強張らせる。
「まぁ…だいぶ顔色は良くなってきたな」
彼は少し安心した様に笑うと、私の頭をぽんと優しく撫でる。