勿忘草
「あー…ちょっと飲み物買ってくるわ」
「けれどジュースならさっき飲んだんじゃ…」
不思議に思い、私がそう言い終える前に、
彼は再び水族館に向かっていた。
そして彼は従業員さんに何か言って、再び水族館へ入れてもらっている。
そんなに喉渇いたのかな?
まぁ暑いし、仕方ないよね。
そんな事を考えながら、
もう彼が見えなくなった水族館の入口を見つめる。
『うわっ冷てぇ~!!』
『ばぁーか』
笑い声と共に聞こえたその声に、私は何気なく顔を向ける。
すると小さな男の子達が、水鉄砲で遊んでいた。
3人で追いかけ合いながら、楽しそうに騒いでいる。
多分、すぐそこに公園にあるような水飲み場があるから、
その水を使ってるんだろう。
夕方とはいえ、まだ暑い。
きっと水が気持ちいんだろうな。
未だにじりじりと肌に当たる太陽に、
自分の足元を見ながら、私は小さくため息をついた。
「ねぇ。」
「!?」
私は俯いて総護君の事を待っていると、
いきなり私の前に大きな影が出来る。
驚いて顔を上げると、そこには見知らぬ若い男性。
「どうしたの?こんな所に一人で」
いきなり声を掛けられて驚いている私に、その男性は更に話し掛けてくる。