勿忘草
「今…人を待っていて…」
私がそう答えると、男性はふーん。と言って辺りを見渡した。
「友達はあとでいいからさ。ちょっと付き合ってくんない?」
ニヤニヤしながらそう言ってくる男性。
「私が…ですか?」
見知らぬ男性は頷く。
「けれど、待っててって言われたので」
総護君が帰ってきて私がいなかったらきっと心配する。
それに空木さんだってもうすぐ戻ってくる。
そう断ると、彼は肩を落として、酷く落胆した。
「うわぁ、マジかよ…。君みたいな子、連れてくるって先輩に言っちゃってさぁ。参ったなぁ…」
困ったように表情を崩す男性。
「…私が行かないと、貴方が困るんですか?」
どうやら困っている様子の男性にそう尋ねる。
すると男性は、俯いていた顔を勢い良く上げて、ここぞとばかりに詰め寄ってきた。
「すっげぇ困ってる!頼むよ。助けてもらえないかなぁ」
お願い!
そう言いながら、勢い良く顔の前を手を合わせ、頼み込んでくる。
どうやらこの人は本当に困っているみたいだ。
私が出来ることなら、助けてあげたいけれど…。
「助けてあげたいんですけれど、友達が戻ってきた時、私がいなかったらきっと心配するので…」
ごめんなさい、といって私は頭を下げる。