勿忘草
「飲み物を買いに行っただけなので、すぐに戻ってくると…あ!」
私が男性を見ながらそう答えていると、
男性の後ろに人影を見つけ、声をあげる。
男性は自分の後ろにある人影に気づいていなかったのか、
不思議そうな顔で私を見てから、
私の視線の先を見る。
ブシュアァア!
「うわっ!!」
「!!!」
すると振り向いた瞬間、男性の顔に勢い良く炭酸ジュースが噴射された。
驚いて、目を見開く。
「ちょっ…なん…ケホッ!!」
ジュースを滴らせながら、
顔を手で覆い、男性は噎せている。
目に入ってしまったのか、辛そうに腰を曲げた。
そして男性の先には恐い顔をして、手にジュースが滴っているカンを持った総護君。
「オイ!今の見たかよ!!」
「すっげぇ、顔面直撃だぜ」
近くで水鉄砲で遊んでいた少年達が、
ゲラゲラ笑いながら男性を指差した。
「わりぃ、手が滑っちまった。」
そしてまったく気持ちのこもっていない謝罪をしながら、彼は両手を掲げている。