勿忘草
俺達はなんとか教材室の掃除を終え、やっとの思いで学校を出た。
学校をでた頃にはもうすっかり日は落ち、
時計の針は7時を指していた。
「今日は実家に行くから一緒に帰ろうぜ」
「おっ。そっか、珍しいな。家に帰るなんて」
少し驚いているが、久しぶりに一緒に帰れる事が嬉しいのか、にこにこと楽しそうだ。
俺は普段独り暮しをしている。
だが陽介とは中学が一緒の為、実家だと帰る方向が一緒だ。
陽介はあの話をしてからというもの、終始笑顔でご機嫌だった。
それに引き替え俺は…
「それじゃあーな総護!!」
駅から出てぶんぶんと俺に手を振る陽介に、
素っ気なく返事をし、俺は暗くなった道を歩き出した。
ふぅ…
小さな溜め息を一つ吐き、ゆっくりと空を見上げる。
今日は晴れていたからか、星がよく見えた。
星は、すぐにでも消えてしまいそうな小さいのモノから、
小さくもしっかりと、強く輝いているモノまで。
その姿はそれぞれ一生懸命に、この暗闇を照らそうと頑張っているようにも見え、
とても美しく思えた。
「今日は満月か…」
小さくそう呟くと俺は再び溜め息をついた。
頭の中で、陽介の喜ぶ姿が浮かんだ。
そう…
これでよかったんだ。
今は何故かこんなに後悔してるけど
付き合えばその気持ちもきっと無くなる。
いつか付き合ってよかったって思える日がくる。
自分に言い聞かせる様に頭の中でその言葉を繰り返し、
ふらふらと夜の道を歩いていく。