勿忘草
ブワァアァー
「ーーっ」
勢い良く吹き荒れた風に思わず目を瞑る。
ザワザワと木の葉は先程よりも激しく揺れ、
草花は空高く舞い上がった。
風が弱まったのを感じ、瞼を開ける。
「なんなんだよ…」
そう思いながら再び後ろを振り向くとふわりと何かが香った。
その香りにぴくりと眉が動く。
目を凝らせば、視界に小さな白い花びらが舞う。
その花びらは俺を引き止めるように…
俺の周りを舞う。
そして俺はその一つを片手で掴み取り、そっと見つめた。
何かがこの先にあるような気がして…
妙な胸の高鳴りを感じた。
運命の歯車が廻り出す。
ゆっくりだけれど、
確実に。
廻れ、廻れ、歯車よ。
それは、悲しくも愛しい時を紡ぐのだから。