勿忘草
『此処は…ど…こ?』
思わず声が掠れた。
まるで何年ぶりにでも口を開いたかのような感覚だった。
何気なく紡がれた自分のその声に聞き覚えがない。
『わ…私は…』
自分の声のはずなのに
知らない声が口からこぼれていく。
とてつもない違和感。
重い体を無理やり起こし、辺りを見回した。
空には夜の暗闇と美しい満月。
少し肌寒い風が様々な花の香りを運んでくる。
『…懐かしい香り』
自分の声は知らないのに、この花の香りは懐かしいだなんて…
変な感じだ。
一面に広がる花畑の下には
星ではない輝きが散りばめられていた。