勿忘草
必死に否定するとそれが癇(かん)に障ったのか、
少しムッとした顔になった彼に少し嫌な予感がした。
「そうか、そんなに食わせてもらいてぇか」
そう言いながらにっこり微笑む顔は目が笑っていない。
そう言いながら彼は熱々のお粥をしっかり冷まして私の口の前にずいっと近づける。
「ほら、口開けろ。」
なんだか命令口調の彼に無理と首を再び横に振れば、
彼は再び意地悪な笑みを浮かべてこう言った。
「食わねぇとキスする。」
そう言って顔を徐々に近づいてくる綺麗な顔に心臓が破裂しそうになる。
耐えられず、目をぎゅっと瞑り急いで言った。
「食べます!!食べっ…むぐ」
口の中に広がる卵の風味。
驚いて目を上げれば彼は満足げに微笑み、
カラになったれんげをお盆の上に置いた。
「よし。じゃあ俺はこれからバイトがあるから。あとは自分で食えよ。」
そう行って立ち上がると、唖然とする私の顔を見ていった。
「なんだ?キスして欲しかったのか?」
「ちっ違う!」
顔が再び真っ赤になるのを感じながらそう叫んだ。
その様子を見て、彼はとても面白そうにクククッと笑いながら、
「7時には帰る。部屋は好きにしてもいいけど、ちゃんと寝てろよ」
そう言って部屋を出て行った。