勿忘草
ガチャ
ベットの中でうとうとしていると、ドアの開く音が聞こえた。
一気に目を覚まし、寝室から出る。
するとリビングには少し息切れをしている総護君の姿があった。
私の姿を見るとふっとどことなく安心したような何ともいえない表情になった。
その顔にドキッとする。
私の為に急いで帰ってきてくれたの?
思わずそんな淡い期待がよぎる。
「…お帰りなさい」
そう言うと彼は腕で首の汗を拭う。
「おぅ、ただいま。ちゃんと安静にしてたか?」
そう言いながらこちらに歩いてくる。
「ちゃんと寝てたよ。お粥も凄く美味しくて…ありがとう。」
すると彼は目を細めて、優しく笑った。
「どういたしまして」
そう言いながら彼は子供を褒めるときのように、私の頭に手をポンと撫でた。
大きな手に心地よい重みが頭にかぶさる。
それが心地良くて…
その手の温もりが、何故か少しだけ懐かしく思えた。