勿忘草
彼は私から手を離し、テーブルの上にあるクーラーのリモコンを操作した。


「にしてもあっちぃな。晩飯買ってきたけど食べれるか?」


彼はスーパーのビニール袋をガサガサと漁り、中からお弁当を取り出して私に見せた。




「食べれるよ」



私がそう答えると、彼はそっかといってテーブルの上にお弁当を並べた。


「好きな方選んで、先に食ってろ」


彼はそう言うと、先程のビニール袋を持って冷蔵庫へ向かった。



私はテーブルの上に並ぶ2つのお弁当を目を向ける。



1つ目はハンバーグ弁当、
2つ目は魚フライ弁当。


エビフライ…かな?


私はエビフライ弁当を選び、椅子に腰掛けた。


「わりぃな、つい俺の好みで選んじまった。消化の良さそうなのにすりゃ良かったな」


彼は少し申し訳無さそうな顔をしながら、冷たいお茶とコップを持ってこっちにくる。


「ううん、もう大丈夫だから。ありがとう」


「そっか」

2つのコップにお茶を注ぐと、
彼は向かい側の椅子に座った。


パキンと割り箸を割ってお弁当を開く。


「いただきます。」

私が手を合わせてそういうと、彼はその様子をなんだか驚いたような眼差しで見てきた。




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