勿忘草
でもこれ以上はだめだ。
彼には十分すぎる程お世話になった。
これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
彼は優しいから…
きっと自分から出てけなんて言わないだろう。
「私はもう大丈夫だから。後はここを出て自分で何とかする。警察に行けばきっと助けてもらえるだろうし…。だから…」
私はギュッと手を握り締めた。
言わなきゃ…
ここを出て、たとえ独りぼっちに戻ったとしても、
もうここには居られない。
「…っ」
彼はただ黙って私を見ている。
「……今までありがとうございました。」
立ち上がり深々と頭を下げる。
「……。」
しばらく私達の間に沈黙が流れた。
私は顔を上げずただ頭を下げている。
そのせいで彼の表情が見えないから、一体彼が何を思ってるのか分からなかった。
「…ふざけんなよ」
彼が小さな声でそう口にする。
「今まで俺に散々迷惑かけといて、元気になったらありがとうございました?都合良すぎだろ」
彼のその言葉にドクンと心臓が飛び跳ねた。
確かにその通りだ。
彼からしたらそれは都合が良すぎる。
怒るのも無理はない。