勿忘草
「でも…」
「家族もちゃんと捜す。忘れてたけど警察に知り合いいたんだよな。そいつに頼む」
彼は冷蔵庫の中からアイスを取り出す。
「そっ…総護君。嬉しいけど私っ」
「嫌とはいわせねぇ。最低でも1ヶ月は、今までの世話代として働いてもらうぜ」
彼はいつの間にか私の目の前に立っていた。
「…っ」
あなたはとても意地悪。
でもそれ以上にあなたは優しい。
私が迷惑ばかりかけている事を負い目に感じているのを、総護君は知ってたんだ。
だから何もない私でも出来る事を与えたんでしょう?
それが義務だと言って、ここを出て行かないように。
私が1人にならない為に。
そんな言い方をしても無駄。
私はもう知ってるもの。
あなたがどんなに優しい人かを。
鼻の奥にツンと鈍い痛みが走った。
すると徐々に視界が歪んでゆく。
「…っ…ぅ」
思わず涙が流れた。
けれどそれは昨日のような悲しくて、
寂しい涙ではなくて。
とても暖かくて、
優しい涙だった。