勿忘草


じわりと体に熱が籠もる。

その暑さに耐えられず、思わず体を机に滑らせた。

そしてうつ伏せの状態からなんとか体を少し起こし、片手で頬杖をつく。


窓を開けているのに、まったく靡かないカーテン。

教室に響くのは黒板とチョークがぶつかり合う音と、ノートの上を静かに滑るシャーペンの微かな音だけ。


こんなに静かな授業は久しぶりだ。

テストが一週間に迫っているせいとも思うが、

一番の理由はきっとこの暑さだろう。



余りの暑さにみんな喋る気力すらないみたいだ。
教師もテスト範囲がまだ残っているため、延々に黒板に文字を書き続けている。



いつも通りの景色


ありふれた日常






…そろそろ“アイツ”が居なくなったのも大分慣れた。

まだアイツがいない寂しさは感じるけど、
随分と楽になったと思う。



俺はあの時より少しは成長できただろうか?



「…い、おい、そーご?お前聞いてんのか?」


そんな事を考えていると、視界の前で何か肌色のものが上下に動いていることに気がついた。


「んあ?」



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