勿忘草
マンションを出るとやはり外は暑くて、太陽の眩しい光が肌を差す。
そして外には、綺麗な光沢を放つ、高そうな車が一台止まっていた。
その前で立っている高齢の男性は、この暑い中ピシッとスーツを着ている。
私と総護君の姿を見つけると、礼儀正しく礼をしてきた。
「おはようございます。総護様、シオン様」
様?
「おはよう空木。暑い中悪かったな」
彼の言葉に、とんでもないと微笑む空木という人は、
とても優しい雰囲気を持った人だった。
「シオン、この人は空木だ。昔から家に仕えてくれてる」
総護君が私に紹介すると、
彼は私にとても丁寧に一礼した。
「初めまして。榊家に仕えさせて頂いております空木 敏治(ウツギ トシハル)と言います。どうか、私の事は空木か敏治とお呼びください。」
《仕えてる》
その言葉に驚きながらも私は空木さんに挨拶をする。
「私はシオンと申します。此方こそ宜しくお願い致しします。空木さん」
深々と頭を下げると彼は優しく微笑んで、
では、と私達を車へ誘導した。