勿忘草

「いえいえ、無理だなんて。わざわざこんな遠くまで来ていただいて…」


総護君は敬語で葛城(カツラギ)という先生と握手をした。


普段は口が悪いのに…


そんな喋り方も出来るんだ。

感心しながら、彼らを眺める。



そして葛城先生は、今度は空木さんを見て、しわしわな顔をくしゃりとさせて笑った。


「いやぁ、久しいな敏治」


葛城先生はぽんと空木さんの肩に手を置く。


「本当に。元気そうで何よりです」

空木さん達は嬉しそうに笑いながら、再会を喜んでいる。


どうやら彼等は知り合いらしい。



そして今度は私に目を向け、こちらに来た。



「君がシオン君だね」


彼は私に聞いてきた。


「はい、そうです。」



そう答えると彼は目を細めて、優しく笑う。



「私は葛城 志朗(カツラギ シロウ)という者だ。今日君の診察を担当するよ」



「はい。宜しくお願いします」

私が深々と頭を下げる。


「あぁ、よろしくね。事情は敏治から聞いているよ。大変だったね。私も出来る限り協力するよ」



ぽんと私の肩を叩いて、葛城先生はそう言ってくれた。


「はい。ありがとうございます!」


私が笑顔でお礼を言うと、先生は再び微笑んで、よし。じゃあ始めようかといって診察を始めた。



< 94 / 136 >

この作品をシェア

pagetop