勿忘草
「いえいえ、無理だなんて。わざわざこんな遠くまで来ていただいて…」
総護君は敬語で葛城(カツラギ)という先生と握手をした。
普段は口が悪いのに…
そんな喋り方も出来るんだ。
感心しながら、彼らを眺める。
そして葛城先生は、今度は空木さんを見て、しわしわな顔をくしゃりとさせて笑った。
「いやぁ、久しいな敏治」
葛城先生はぽんと空木さんの肩に手を置く。
「本当に。元気そうで何よりです」
空木さん達は嬉しそうに笑いながら、再会を喜んでいる。
どうやら彼等は知り合いらしい。
そして今度は私に目を向け、こちらに来た。
「君がシオン君だね」
彼は私に聞いてきた。
「はい、そうです。」
そう答えると彼は目を細めて、優しく笑う。
「私は葛城 志朗(カツラギ シロウ)という者だ。今日君の診察を担当するよ」
「はい。宜しくお願いします」
私が深々と頭を下げる。
「あぁ、よろしくね。事情は敏治から聞いているよ。大変だったね。私も出来る限り協力するよ」
ぽんと私の肩を叩いて、葛城先生はそう言ってくれた。
「はい。ありがとうございます!」
私が笑顔でお礼を言うと、先生は再び微笑んで、よし。じゃあ始めようかといって診察を始めた。