勿忘草



「まず検査をしよう。君は準備を。君はこの子を案内しなさい」

そう言うと、待機していた看護婦さんが返事をして部屋を出て行く。



「では、私についてきてください」

そして私はもう一人の看護婦さんに連れられて部屋を出た。



しばらく歩くと、ある部屋に案内された。


寝転がる形の大きな機械。


奥には大きな窓があって、
その先にはさらに部屋があった。



その機械を扱うらしい男の人に挨拶をされ、
宜しくお願いしますと返す。


「それではこちらに着替えてください」

そう言ってワンピースのような、前で結ぶ簡素な服を看護婦さんに手渡された。


カーテンに囲まれた小さなスペースでそれに着替え、検査をする。


なんだかその英語の機械に数回入れられ、

それから先生にどれほどの事を覚えているのかや、
地理や、一般常識について聞かれたり
漢字を読んだり、数式も解いたりした。



「最初に気がついた時の状況について教えてもらえるかい?」

椅子に座り先生に質問される。

診察室には先生と私だけ。


総護君と空木さんは外で待機しているらしい。


「気がついたら其処にいて…その時は何も覚えてませんでした。でも、その時ある花の香りがして…」



「花?」


先生がぴくりと反応する。


「はい。白い花畑の中に。その花を見て思い出したんです。自分の名前を」


< 95 / 136 >

この作品をシェア

pagetop