勿忘草
「まず検査をしよう。君は準備を。君はこの子を案内しなさい」
そう言うと、待機していた看護婦さんが返事をして部屋を出て行く。
「では、私についてきてください」
そして私はもう一人の看護婦さんに連れられて部屋を出た。
しばらく歩くと、ある部屋に案内された。
寝転がる形の大きな機械。
奥には大きな窓があって、
その先にはさらに部屋があった。
その機械を扱うらしい男の人に挨拶をされ、
宜しくお願いしますと返す。
「それではこちらに着替えてください」
そう言ってワンピースのような、前で結ぶ簡素な服を看護婦さんに手渡された。
カーテンに囲まれた小さなスペースでそれに着替え、検査をする。
なんだかその英語の機械に数回入れられ、
それから先生にどれほどの事を覚えているのかや、
地理や、一般常識について聞かれたり
漢字を読んだり、数式も解いたりした。
「最初に気がついた時の状況について教えてもらえるかい?」
椅子に座り先生に質問される。
診察室には先生と私だけ。
総護君と空木さんは外で待機しているらしい。
「気がついたら其処にいて…その時は何も覚えてませんでした。でも、その時ある花の香りがして…」
「花?」
先生がぴくりと反応する。
「はい。白い花畑の中に。その花を見て思い出したんです。自分の名前を」