勿忘草




「強い思い出はね、辛かろうと、楽しかろうと君のここに深く残っているものなんだよ」



葛城先生はそう言って、自分の胸元を指差した。



私はそれを見て、自分の胸に手を当ててみる。



「そう、心だ。」



「心…」



そう小さく呟くと、彼は優しく笑って、こう続けた。



「君が本当に記憶を取り戻したいと願うのならば、きっと心は君に応えてくれる筈だよ。」






心が…


応えてくれる?





私はそっと目を閉じて、穏やかに笑った。




それならきっと…






きっと取り戻せる。








眩しい太陽の日差しが、診察室をより一層明るく照らし出す。



それはきっと希望の光。









私は必ず、全てを思い出してみせるよ…。














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