月の兎 ~ 十五夜の恋
「参ったなぁ~
お月さまに見張られちゃ
どうにもこうにも仕方ありませんね」
「えっ?」
「ところでキミには
月の兎が見えるのですか?」
千尋さんの長く伸びた前髪の間から
鋭く光る瞳が覗いていた
「センジンさんには見えないんですか?
あたしは小さい頃
婆ばに
月には兎がいて
あたし達が餓えないように
毎晩一生懸命お餅をついてくれている
って聞かされてました
ほらあそこ
満月の夜には
餅つく月の兎がはっきりと見えるでしょ」
あたしは遥か遠くの満月の中
餅つく兎を指差した