月の兎 ~ 十五夜の恋
部屋の前で立ち止まり
鍵穴に鍵を差し込もうとした瞬間
<ガチャリ>
お隣の千尋さんの部屋の戸が開いた
「駄目だよ
こっち、こっち
もう準備万端
キミの帰りを待ちわびてたんだから」
仙人が顔を覗かせて手招きしてた
「でも……
ビールの一本でもお持ちしようかと……」
「ビールはこっちに冷えてるし
ボクはもう腹ペコで死にそうです」
千尋さんの顔は
こころなしか青白くて
今にも倒れそうな緊迫感がありました