月の兎 ~ 十五夜の恋
「いや
仕事でだ
がっかりさせて悪いがね
実はボクは売れない探偵小説家なんです」
「な、なんと!」
あたしはさほどの感激もなく驚いて見せた
つもり……
「嵐山月人(アラシヤマツキヒト)
っていうペンネームで探偵小説文庫に書いています
文庫って言っても
たいした発行部数はないんです
売れないからね」
いやいや……
ここで頷いたらいけませんよね
「ここからが本題です」
あたしは今度こそ真剣に驚いてみせようと
身を乗り出して耳を傾けた