~天へ送る風~
「リッキー、リッキー!」
自分の名を呼ぶ優しい声に、リッキーは目覚めた。ここは友人宅だ。
あまり迷惑もかけられないというのにもう、何度目か。
「ごめん……ボク、また……」
「ううん、しかたないよ。あのリッキーのお母様があんな風になっちゃったんだもの」
自宅の二階には母がこんこんと眠り続けている。
母の身の回りのことはいつもサロンで竪琴をつま弾き、雇われ音楽家の学生が定期的に診てくれている。
断ったが再三申し出られ、ありがたく受けることにした。それに原因が自分だと思うと母に触れることすら許されない気がした。
もう数時間と経つのだ。
いや、まだ、と言うべきか。