~天へ送る風~


 途端、アレキサンドラの勘が閃いた!


「蛇は自分で熱を作れない。冷血とののしる無かれ。彼らほど陽のぬくもりを求めて生きる動物はないのです。それが、泉に出現?」


 リッキーの目は鋭く、英知の光を湛えていた。


「変だと思いませんか? まるでこれ見よがしに……水蛇ではないのですよね? 王子」


「たしかに水蛇ではない。という話だが……」


「なぜ今なのでしょう。人々の不安につけいるように、とってつけたような、もう、すぐにでもほころびが出てきそうなお話です」

 ざわり、と森の木がざわめいた。

 アレキサンドラの声が殷々と響いていた。

 息が切れ、さすがに休憩をとろう、と彼女が考えていた頃だった。
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