~天へ送る風~


「ですからね……」

 と彼女は続けたかったが、王子が本格的に凍えそうになって岩場で足を滑らしそうになり、あわててその腕をとり、引き上げた。


「あ、ありがたい」


 彼女はマントのボタンを全て外し、王子をその内へと引きこんだ。


「腕をわたくしの背の方へまわして……」


 そして、すっぽりと彼の身体を包んでしまうと、彼女は言う。


「申し訳ありません。あなたは温室育ちで寒いのは苦手なご様子。配慮を欠きました」


 ご無礼を、と彼女は小鳥がひな鳥を暖めるように王子を暖めた。

 なんだか守らなくちゃいけないものが増えたみたいだ。


「そ、そもそも、オンナは男より余計に肉がついてるから、この寒さが理解できないんだ」

 真っ赤になって、そう言った。王子はよくよく軽率な質だ。

 まあ、照れ隠しなのだろうが……
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