~天へ送る風~
途端、アレキサンドラは彼を突きのけた。彼女は白い息を盛大に吐きつつ怒っていた。
「あなたの国の民はこれ以上に厳しく、辛い思いをしているのですよ。心まで! いまにも凍り付いてしまいそうなんです!」
すべて、王という太陽を失ってしまったためだ。彼を失ってなお、人々は生活している。
朝に起き食事をし、昼に働き、夜に寝る……。
当たり前のようなこの暮らしは戦争に勝って王が民人に授けたものだ。
だから民はそれを忘れない。いつか、王が帰還するまで、待っているのだ。
いつまでも、愚かしく。
「善政をしく父王だからなのだ。城内の者はなおさら私に冷たく辛くあたる。だれもこちらを見ようとさえしない」
「王子……」