~天へ送る風~
それでもアレキサンドラはグローブを両手にはめ、さっさと近づいて上あごを持ち上げて毒牙を抜いてしまった。
白蛇は安堵したように彼女に頭を預け、おとなしくしている。
「ほ、本物なのか? マグヌス宰相、あなたなのか? なぜこんな姿に……」
「お疑いなら、王子、そこに突き立てられている剣を抜いてご覧なさい」
「これは呪(まじな)いの剣……! 儀式には使っても人を害したりできないように刃がつぶしてあるやつだ」
「見えるのですね。サフィール王子、あなたにも」
こうなったら形式的にではあるものの、本気で力をこめて抜こうとした王子だったが、剣は微動だにしない。